男を愛する女性の成長物語として。森山絵凪『この愛は、異端。』
こんばんは。
ぬくさんです。
いやあ・・ヤバかった。
森山絵凪先生『この愛は、異端。』。
このマンガを読んでしまったせいで、仕事のスケジュールが大幅に遅れるところでした・・・!!
危なかった・・!!
このマンガは、危険。
そんな危険なマンガについての感想を、この記事では書きたいと思います。
ちょっとネタバレしてます。
ぬくさんは、あらすじを知ったくらいでつまらなくなるような作品は、
その程度って思ってるのであんまり気にしてませんが、
まっさらな状態で作品読みたい!という方は、ご注意を。
Amazonのオススメで、しょっちゅう上がってきてて、
あ、絶対これ私これ好きだわって思ってたんですけどね。
予想通り、読んだらむっちゃハマりました。
買った当日、10回くらい読み返しまして、まだ読み返してます。
メガネ男子がツボのぬくさんにとって、ベリアルやばい。
かっこよすぎる。
やはり面白すぎて、このマンガは、危険。
Amazonとかコミックシーモアの感想読んだら、ぬくさんと同じようにどハマりする人が多いようです。
理由として、
- 絵が綺麗っていうレベルじゃなく美麗
- 惹きつけられるストーリー
- エロいっていうか官能的
- ハーレクイン的王道ハッピーエンド
うんうん、それはよくわかる。
でも、それだけじゃないよね??
人外恋愛譚は、ここ数年人気のジャンル?なのか、
よく似た設定の少女漫画もいくつかあります。
先行作品の中には、人外に好かれる魂持ちの少女と、力のある妖怪の頭領っていう、
設定そのまんまやんけ!っていうマンガもあります。
だけどこう、ハマり方とかカタルシスとか、なんかこう・・違うよね?
作者の森山絵凪先生の絵が、めっちゃ上手というのもありましょう。
twitterに過去に描かれた油絵とか載せてらっしゃいましたが、すっっっごくお上手というか、タッチがめっちゃこなれてる。
美術を専門的に学び、技術の研鑽をなさった方なのでは。。。と推察します。
あと、アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』を見事に作品化なさったりとか、
文学作品にも親しんでこられた気配がする。
ストーリーテリングのうまさも、付け焼き刃っぽくないのですよねえ・・・
野暮を承知で、ぬくさんの予想では、
森山先生は男性。美大出身じゃないかな〜、と予想してます。
さて、ぬくさんの意見ですが、
ここまで支持されている理由は、
見事なストーリーテリングの力量、
技術の鍛錬を感じさせる圧倒的な画力、
みんな大好き官能性、
だけじゃなくて、
ヒロイン・よしのちゃんが、
悪魔・ベリアルへの愛を自覚していくなかで、
女性として成長していくからだと思うのですよ。
3巻を読み終わった後、学生時代に読んだ、ユング派の心理学者、エーリッヒ・ノイマンの本を思い出しました。
確かこれだったと思うんですが、「アムールとプシュケー」だったかも。
ちがったらごめんなさい。
間違っていたら、ご指摘頂けると幸いです!!
これも絶版してるんですよね〜。
『女性の深層』をざっくりご説明すると、
ギリシャ神話の愛を司る神・アモールとその妻で人間であったプシュケー(ローマ神話だとキューピッド)の話です。
アモールに見初められ、何もわからぬまま妻となったプシュケー。
言いつけを破り、夫の姿を見たため、夫のそばにいられなくなります。
ふたたび夫の元に戻るために、数々の試練を乗り越え、夫と再会し、神々に迎えられる・・というストーリーです。
ノイマンは、この神話を、女性の深層心理学的成長を象徴するものだとしました。
このプシュケーの姿が、よしのちゃんに重なるんですよ!!
生まれる前から、何も知らないまま、
ベリアルからの愛を受けて、大切にされてきたよしのちゃん。
それは、ご両親が事故で亡くなった後、
あわや不幸な境遇に陥りそうになって、
ベリアルと一緒に暮らすようになってからも、
18歳になってエロいキスされるようになってからも、
20歳になってワガママボディをまさぐられるようになっても、
基本的には変わりません。
疑問は抱いていても、愛されることをあたりまえとして、享受する日々。
それが、旭くんという外部からの異分子によって、変わっていきます。
「もしかしたら自分は不幸なのかもしれない」
「当たり前のものが、得られていない」
そう思ってしまうのです。
プシュケーの物語だと、昔話によくありがちなイジワル姉さんたちが異分子で、
豪華な宮殿に何不自由なく暮らすプシュケーをやっかんで、
姿を見せない夫をこっそり見てしまうように、そそのかします。
旭くんは旭くんで、
人間との結婚生活という選択肢を見せることで、
よしのちゃんをそそのかします。
プシュケーもよしのちゃんも、そそのかされた結果として、
これまで通りでいられず、苦悩や苦難を背負うことになります。
苦悩や苦難を通じて、自分がいかに愛されていたか、
そして男を愛しているかを自覚していきます。
そして、『愛する男と正しく一緒にいるために』、
二人とも苦悩や苦難を乗り越えていくわけです。
よしのちゃんの受けた苦難は、
ベリアルが生きて戻ってこないかもしれないという大きな不安。
それに比べると、
自分で家事をすることは、ささやかなものかもしれません。
でもね・・ちゃんと毎日家事するって、大変だよ!!!
ぬくさんは、実家に長くいたから、
結婚して家事を習慣化できるようにまで大変でしたよ・・ええ・・。
やったことがないことをやるって、ものすごくエネルギーがいることですし、
何もできなかった少女が、家事をして、自分で生きていけるようになるということは、
女性として一人前になる、という象徴のように感じたんですよね。
大きな不安を抱えて、女性として成長したよしのちゃんへのご褒美。
愛するベリアルとの豪邸での生活です。
この辺も、アモールの正式な妻として、神々に迎えられたプシュケーと重なるんですよね。
今後も苦労は待っているだろうけど、ずっと応援したくなります。
知ったかぶってユング心理学的に言うなら、
人間の深層心理の元型に合致しているからこそ、
普遍性があり、目の肥えた漫画読者たちの心を掴んでいるのだと思います。
第2部が楽しみでならないですよね!!
まだ当分はハレムで連載しているベリアル文書のほうが続くんでしょうね。
もちろん、こっちも面白いですけど!
森山先生、体調を去年は崩されたようで、心配です。
どうぞどうぞ、よしのちゃんとベリアルの物語を、末永く描き続けていただきたいので、
白泉社さん、先生にご無理をさせないよう、心からお願い申し上げます。
日々是好日。
今日も読んでくださって、ありがとう。